映画『世界から猫が消えたなら』― 佐藤健さんオフィシャルインタビュー

Interview ― 佐藤健さんオフィシャルインタビュー

― ついに作品が完成しました。佐藤さんの一番お気に入りのシーンはどこでしょう?

佐藤健さん: 一つだけ挙げるのは難しいですが、まず一つはラストシーン。特にエンドロールに入る3秒前が好きです。終わり方が良いですよね。他の作品ではない手法を用いているので、是非注目してみてください。あと、自分が出ているシーンだと、苦労した分思い入れも強いので“僕”と“悪魔”の二人が出てくるシーンは全部好きです。

― 今回は“僕”と“悪魔”を一人二役で演じられましたが、特に苦労した点は?

佐藤健さん: 二役を演じることというより、悪魔のキャラクター設定がとにかく難しかったです。俳優は一人二役となると極端にやりたがってしまう。実際に僕もそうでした。 でもそうするとリアルからどんどん離れていってしまうんですよね。それが心配だったので監督とお話しして、クランクインの前に数日間リハーサルをやらせてもらいました。 その時に悪魔のキャラクターやテンション感を話して、自分の中で“悪魔”を作り上げていきました。悪魔って実際にはいない存在じゃないですか。だからすべてが自由なんです。 何をやって何をやらないのかも自分のさじ加減だし、やり過ぎて壊してしまっても、やらなさ過ぎて印象に残らなくてもダメ。そのバランスが本当に難しくて、取捨選択が凄く大事でした。 そこは監督がかなりシビアに見てくれていたので良かったです。もちろん反省点もたくさんあるけれど、満足がいくものになりました。

― 佐藤さんの中で“悪魔”は最初どんな印象だったんですか?

佐藤健さん: 最初は特殊メイクをしたいと思っていました。だって悪魔だし、ファンタジーだし、何でもありかなって(笑)。だから、僕としては特殊メイクをして、ファッションもヴィジュアルも全く違うのが良いかなって思っていたんです。でも色々な話し合いの末に髪型もメイクもファッションの方向性も一緒にすることになりました。なので、「指だけはつけさせてほしい」とお願いして採用してもらいました。“僕”はあまり動きがないから、“悪魔”は少し動きがあった方が良いんじゃないか、と。手で動きを表現するときに指に少し違和感があったら面白いじゃないですか。なので“悪魔”の指は“僕”より1.5センチくらい長くなるよう特殊メイクをしました。

― では“僕”はどのように作っていきましたか?

佐藤健さん: “僕”は函館でのびのび育った、凄く純朴で優しい良い子だと思っていました。しかもこの作品は“僕”が死んでしまう物語。だから、“僕”が死んでしまった時に観ている人たちが悲しくなってもらえるようにキャラクターを作りました。健気で愛すべき青年になっていれば嬉しいです。

― “僕”と“悪魔”を交互に演じ分けていくのはかなり高度だったと思いますが?

佐藤健さん: その都度その都度、スタッフの皆さんと一緒に考えながら撮影をしていました。今回のような撮影の仕方はみんな初めてのことだったので、とにかく話をしてやりやすさを探っていきました。撮影にも凄く時間がかかりましたね。“僕”を演じたら“悪魔”を演じて、また“僕”を演じて“悪魔”を演じて・・という流れで撮影していったのですが、皆さんが本当に優秀な方々だったのでお芝居があちこちに行ってしまってやりづらいなんてこともなくて。自分が考えられる最高の環境を用意してもらっていたので、本当にこのチームでよかったと思っています。

― 台本を読んだ時の感想も教えてください。

佐藤健さん: 泣きました。特に“僕”と母親の関係。父親含めて3人で家族旅行に行くあたりからずっと泣いていました。特にぐっと来たのが、予約していたはずの旅館が、何かの手違いで宿泊できないことになってしまって、“僕”と父さんが駆け回って新しい宿を探すけど、結局あまりいいところには泊まれない。 決して特別美味しくないご飯を食べた時に「ご飯、美味しいよ」って母さんが言うところなんです。永井監督とか色んな方に言っても「なんでそこ?」って言われるけれど、僕には何かくるものがあります(笑)。 監督達は“僕”と母さんが一緒に海岸にいるシーンが一番泣けると言っていました。でも台本を読んだ時に僕にはあまりピンとこなくて。 今まで‘親が亡くなる’ということを考えたことがなかったから実感がわかなかったんだと思います。僕より上の世代の方達には親の死ということに対して受け取り方が違うんだと改めて感じました。 だから、監督たちが一番感動したというそのシーンをピークにもってくるお芝居をしないといけないと思って、そこまで精神状態を持っていくのが大変でした。 実際に実家に帰って母親の顔を見たり、久々に飼い猫と触れ合ったりもしましたね。そうやって“僕”と自分の人生をできるだけ重ねようと。後は家族がテーマの映画を見ました。 とにかくそのシーンをどう受け取ってもらえるのかが不安だったので、必死だったことを覚えています。

― 猫(キャベツ)との共演も魅力の一つですね。

佐藤健さん: キャベツを演じたパンプ君は本当に天才なんです!猫と一緒に芝居すると聞いた時は「どれだけ苦労するのだろう」と覚悟を決めていたのですが、そんな心配は杞憂に終わりました。あんなに芝居ができる猫はいないですよ。僕も猫を飼ってきたし、いろんな猫を観てきたからわかるんですけど、猫って気紛れだし気分屋だし、本当に大変なんです。でもパンプ君はNGもない。本当にびっくりしましたね。タオルに包まれているキャベツのシーン、超絶可愛いですよ!

― 北海道、アルゼンチンとロケも多かったですが、印象はいかがでしたか?

佐藤健さん: 函館を中心に北海道で3週間、アルゼンチンで2週間ほど撮影をしました。
一番思い出深いのはやっぱりアルゼンチンロケかな。海外で映画を撮影するのも初めてだったので新鮮だったし、幸せな経験でした。ワインを飲みながら芝居をしたり、イグアスの滝を観光したり、楽しみました。

― 今回初タッグを組んだ永井監督はどんな監督でしたか?

佐藤健さん: とにかく冷静な方で、しっかりと見極めて芝居を調節してくれるので、助けてもらうことも多かったです。監督が俳優の芝居を撮りたいって思ってくれているのが伝わってきたので俳優としても嬉しかった。シチュエーションを想定してそこに俳優の芝居を当てはめていくのではなくて、「あなたたちが役の人生を生きてください。それを僕たちが撮りますから」って言ってくれて、丁寧に芝居を観てくださる。キャラクターの心の奥を見てくださる方たちの元で芝居をできるのは幸せなことでした。

― 共演者の方々の印象も教えてください。

佐藤健さん: “彼女”役の宮﨑あおいさんとは初共演でした。最初のシーンは“僕”と“彼女”はすでに分かれていて久々に会う、という設定だったんですけど、微妙な距離感がうまくシンクロしていたんじゃないかな。その後にちょっと慣れてきたくらいのところで、二人がまだ付き合っていたころのアルゼンチン旅行の回想シーンが入ってきて。二人とも凄く楽しんでいたのでその雰囲気が出ていると思います。あおいちゃんは普段はお酒を飲まないんですけど、今回は撮影の時に実際に飲みながら演じていました。
ツタヤ役の濱田岳君とも初共演です。撮影日数は少なかったけど、じっくりやっていきました。ツタヤとの掛け合いのシーン、好きですね。「アドリブでやって」と言われたので二人で頑張ったんですけど、監督には「アドリブ下手だね」と言われてしまいました(笑)。岳君も、もともと色々な作品を見させて頂いていて、本当にお芝居も素晴らしいし、今回共演させて頂けて嬉しかったです。
奥田さんとは何度もご飯に行きました。函館ロケだったから泊まりでしたし、原田さんと三人でお寿司にも行きました。いっぱいご飯に誘っていただいて、仲良くさせていただいていました。原田さんは本当に可愛らしい方でしたね。旅館のシーンは、本当はみんなその日に帰ることもできたけど一泊しようって言って泊まったんです。みんなで温泉に入ったりもしましたし、楽しくて良い家族になっていました。

― 今後挑戦してみたいことはありますか?

佐藤健さん: ティム・バートンばりの特殊メイクです。日本でファンタジーをやるのって難しいじゃないですか。それが凄く悔しい。規模も熱量も予算も違うし、洋画を観た時によく悔しい思いをしています。だからそういう意味でもチャレンジしてみたい。もし少しでも機会があるなら、そういうお仕事がしてみたいです。

― 最後に見どころを教えてください。

佐藤健さん: 自分や自分の親の死とか、大切なものが消えたらどうなるかなんて普段は考えないと思うし、考えたとしても理解できないことだと思います。僕もそうでした。でも、この作品に携わって色々なことを考えられたように、観てくれた方たちにとってもそういう映画になってくれたら良いなと思います。自分の本当に大切な人、大切なもの、希望を見つけられる映画になってくれたら嬉しいです。それに、観てくれる方の年齢や環境によって刺さるセリフもシーンも違うと思うので、観る人によって響くところが違う面白い映画になっていると思います。

作品情報

映画『世界から猫が消えたなら』

5月14日公開

映画『世界から猫が消えたなら』
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